シナチクは決意した。
いつまでもラーメンの具と思われるのはイヤだ。
そこで一人前の男になるため就職した。
見る見る出世した彼は課長シナ耕作と呼ばれるまでになり、部下のメンマ達を仕切ってバリバリ働いた。
ある日懐かしいラーメン屋に入ると裏でこそこそチャーシュー達が噂しているのが聞こえた。
「シナチクの奴、ここを出て社畜になったらしいぜ」
「おおイヤだ。会社の命令一つで動くのは」
思わずシナチクはその場に踏み込んで言った。
「何が社畜だ。家畜の成れの果てのおまえらに言われたくない」
(遠野秋彦・作 ©2019 TOHNO, Akihiko)